症状を「ランチャー」「認証」「ゲーム内」「反チート」に分解する
まず現象を四つに分けると、YAMLの当てどころがはっきりします。第一に Rockstar Games Launcher 単体がスプラッシュのまま進まない、更新バーが伸びない——ここは多くの場合、カタログAPI や パッチ配信CDN、自己更新モジュール が別ホストに分かれているのが典型です。第二に Social Club のログインや二要素まわりだけが失敗する——ブラウザでは通るのにランチャー内だけエラー、という形なら、同一アカウントでも User-Agent や 証明書ピン、出口IPの評価 が絡む経路差を疑います。
第三に、ストーリーは動くのに GTAオンライン だけロビーに入れない、セッション確立直後に切断される——ここは ROS(Rockstar Online Services) 系のホストに加え、ピア接続やボイス向けの UDP、NATタイプの影響が重なることがあります。第四に、起動直後やマッチ前に 反チート の検証で止まる——BattlEye や Easy Anti-Cheat は、HTTPSの「見えているドメイン」以外にも独自の検証チャネルがあり、雑な DOMAIN-KEYWORD で押し込めると逆効果になりやすい領域です。
本稿の目的は「すべてを一つの海外ノードに押し込める」ことではなく、用途別に出口を揃え、ログでホスト単位に検証できる状態 を作ることです。各サービスの利用規約、コンテンツの取り扱い、お住まいの地域の法令は遵守してください。ここではネットワーク設定の一般的な説明にとどめます。
なぜSteam/Epic稿とは別のドメイン設計が必要か
Steam/Epic向けの記事 では、ストアCDNとコミュニティ/APIを分ける話を中心にしています。一方 Rockstar 系は、rockstargames.com 配下のサブドメイン、Social Club 向けの別名、配信事業者の CDNエッジ(クラウドフロント等の別名を含む)、オンラインセッションの ROS ホストが同時に動きます。購読ルールセットに「ゲーム=全部DIRECT」や「全部PROXY」が雑に入っていると、パッチ取得だけは速いのに認証だけ失敗する、といった 部分的成功 が起きやすいです。
Clashのルールは 上から最初の一致だけ が有効です。広い GEOIP や最終 MATCH が先に来ていると、下に書いた DOMAIN-SUFFIX,rockstargames.com,... は評価されません。逆に、サフィックスを広げすぎると関係ない通信まで同じ出口に吸い込まれ、レイテンシやTLSの挙動が悪化することもあります。運用では「購読プロバイダのRULE-SET」と「自分の追記ブロック」の 前後関係 を常にセットで見てください。基礎手順は YAML分流ガイド に揃えています。
DOMAIN-SUFFIX 例は「設定時点での一般的なパターン」のたたき台です。クライアント版・地域・イベント配信でホストは変わりうるため、必ず 接続ログ とランチャーの診断表示で実名を拾い、自環境のリストに差し替えてください。
ポリシーグループの切り方:AUTH・CDN・SESSION・AC を分ける
実務では次の四つに名前を分けると運用が楽です。ROCKSTAR-AUTH(アカウント・Social Club・ライセンス確認)、ROCKSTAR-CDN(ランチャー/ゲームの大容量取得)、ROCKSTAR-SESSION(ROS・ロビー・マッチメイキングに繋がるホスト群)、ROCKSTAR-AC(BattlEye/EACの更新・検証に見えるFQDN)。いずれもノード候補の末尾に DIRECT を残し、比較実験できるようにしておくと切り分けが速くなります。
select 型で十分なことが多いですが、帯域と遅延の要件が大きく違う場合は、CDNだけ別の高帯域ノード、SESSIONだけ低遅延ノード、といった 住み分け を意識してください。ここで重要なのは、「ゲームだから全部同じグループ」ではなく、失敗ログに出たFQDNがどのグループに落ちたか を一対一で追えることです。
proxy-groups: - name: "ROCKSTAR-AUTH" type: select proxies: - "low-latency-node" - "DIRECT" - name: "ROCKSTAR-CDN" type: select proxies: - "high-bandwidth-node" - "DIRECT" - name: "ROCKSTAR-SESSION" type: select proxies: - "game-stable-node" - "DIRECT" - name: "ROCKSTAR-AC" type: select proxies: - "DIRECT" - "low-latency-node"
DOMAIN-SUFFIX のたたき台:rockstargames.com から反チートまで
以下は 出発点 です。実際のサブドメインはプロダクトやリージョンで増減するため、ログで確認した名前に置き換えてください。まずランチャーとWeb系の骨格として rockstargames.com を ROCKSTAR-AUTH か ROCKSTAR-CDN のどちらに寄せるかを決めます。Social Club 周りは同一レジストラ配下の別名が続くことがあるため、失敗時のFQDNをそのままメモし、広すぎる束ね方を避けます。
大容量取得は cloudfront.net や他CDNの別名に乗ることが多く、ホスト名に prod や patch、download が含まれる行を ROCKSTAR-CDN に寄せがちです。ただしCDNサフィックスを丸ごと DOMAIN-SUFFIX,cloudfront.net,ROCKSTAR-CDN のように書くと、Rockstar以外の通信まで巻き込むため、ログで実際にランチャーが叩いたFQDNだけ を選別して追加するのが安全です。
オンラインセッションは ros.rockstargames.com 系や、環境によっては別パターンのホストが出ます。ここを ROCKSTAR-SESSION にまとめ、認証と同じノードに固定されていないかをログで確認してください。反チートは battleye.com、easyanticheat.net などのFQDNが観測されることがありますが、カーネルドライバやローカル検証が主で、プロキシの出口を変えても症状が残る場合は ゲーム本体の整合性確認 や オーバーレイ/セキュリティ製品 も並行して疑います。
rules: - DOMAIN-SUFFIX,rockstargames.com,ROCKSTAR-AUTH - DOMAIN-SUFFIX,socialclub.rockstargames.com,ROCKSTAR-AUTH - DOMAIN-SUFFIX,scui.rockstargames.com,ROCKSTAR-AUTH - DOMAIN-SUFFIX,ros.rockstargames.com,ROCKSTAR-SESSION # Add launcher-observed patch hosts to ROCKSTAR-CDN (avoid over-broad CDN suffixes) - DOMAIN-SUFFIX,battleye.com,ROCKSTAR-AC - DOMAIN-SUFFIX,easyanticheat.net,ROCKSTAR-AC # Keep GEOIP / MATCH below your Rockstar rules
上記の順序は例です。購読の RULE-SET が先にマッチしている場合は、競合行より上へ移動するか、プロバイダ側のカテゴリを見直してください。コア差を抑えたい場合は Clash Meta(mihomo)の更新 も検討するとよいです。
よくある詰まり:TLS/SNI と UDP をどの順で見るか
TLSまわり:証明書エラーやハンドシェイクタイムアウトが出たら、まずそのFQDNが意図した ポリシーグループ に落ちているかをログで確定します。別の広いルールに吸われて「想定より品質の悪い出口」に行っているケースが多いです。次に DNS を疑います。fake-ip モードでは表示と実接続の対応がずれて見えるため、 DNS fake-ip と redir-host の記事にあるように、ドメインごとの挙動を整理します。
UDPまわり:オンラインのロビー維持やボイスでUDPが使われると、HTTPだけ整えても切断が残ります。システムプロキシだけ有効にしてもゲームプロセスが取りこぼす場合があるため、 TUNモード でルート層から取り込むか、クライアントがプロキシを認識しているかを確認します。Windowsでは UWP/Microsoft Store 版 が絡む場合、 UWPとループバック の制限も念頭に置いてください。
ステップ実測:ログで潰すチェックリスト
設定変更後は、短時間でよいので ログを開いたまま ランチャー起動・ログイン・オンライン参加を試し、ホスト名とpolicyの対応をメモします。ステップは次の順が扱いやすいです。① 失敗したFQDNがどのルール行に当たったか(より上の広いルールに吸われていないか)。② その時点のノードが帯域型か低遅延型か、意図と一致しているか。③ DNSがfake-ipで見かけ上のIPを返していないか、nameserver-policy が広すぎないか。④ UDPがゲームプロセスからプロキシ/TUNに入っているか。⑤ 反チートの更新・検証が別経路でブロックされていないか。
- ランチャーだけ回る:AUTHとCDNのどちらで止まっているかをFQDNで分け、CDNだけ別ノードに寄せる実験をします。
- ログインだけ失敗:ブラウザとランチャーで出口が分かれていないか、TLSのSNIが意図したグループかを確認します。
- オンラインだけ落ちる:SESSIONグループとUDP、NATをセットで見ます。Wi‑Fiの省電力やゲスト隔離も忘れずに。
購読YAMLの更新失敗と混同しないよう、プロファイル取得自体が不安定なときは 購読更新の切り分け も参照してください。
参考:コンソール版・P2Pとの違い
PC版Rockstarクライアントは、コンソールのOSスタックとは異なり、ランチャーとゲームEXEが別プロセスでプロキシ認識に差が出やすいです。任天堂ネットワークの分流は Switch 2/任天堂ネットワーク向け記事 と題材が異なりますが、「オンライン=単一ドメイン」ではないという点は共通なので、ログファーストの姿勢は同じです。
まとめ
2026年、GTA VI Online を含むRockstar系のオンライン体験で Rockstar Games Launcher や Social Club が止まるときは、Steam/Epicとは別の ホスト集合 を疑うのが近道です。Clash では ポリシーグループ をAUTH・CDN・SESSION・反チートに分け、DOMAIN-SUFFIX で実測FQDNを束ね、ルールの 上からの一致 とログを照らし合わせます。TLS と UDP、TUN、DNS fake-ip を順に切り分けると、誤ルートや部分的成功を早く潰せます。
クライアントの入手と比較は ダウンロードページ からどうぞ。GUIの違いで迷っても、まずログで「どのルールに乗ったか」を確定させれば手戻りが減ります。
関連:YAML ルール分流の全般、技術コラム一覧。