なぜPremiumからClash Metaコアに切り替えるのか
しばらくClashのGUIを使っていると、Hysteria2やTUIC v5が設定に書いてあるのに一向につながらない、ということが起きます。多くの場合、ノードが悪いのではなく、コアが古いことが原因です。
Clashの開発は大きく二つに分かれています。一つはClash Premiumコアで、2023年11月を最後に更新が止まり、GitHub上では読み取り専用のアーカイブになっています。もう一つがClash Meta(公式リポジトリ名 mihomo)で、コミュニティによって継続的にリリースされています。
実用上の違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 従来のPremiumコア | Clash Meta(mihomo) |
|---|---|---|
| メンテナンス | 終了(リポジトリはアーカイブ) | 活発に継続 |
| Hysteria2 | 非対応 | フルサポート |
| TUIC v5 | 非対応 | フルサポート |
| REALITY | 非対応 | 対応 |
| Rule Providers | 基本的な対応 | より柔軟・拡張的 |
| 設定の互換性 | — | 一般的なPremium系YAMLと後方互換 |
日常的な利用では、Metaへ移行しても購読プロファイルは壊れにくい設計です。Premium形式のYAML互換を維持しているため、多くの場合はコアの実行ファイルだけ差し替えればよく、全面的な書き換えは不要です。
アップグレード前の準備
差し替えに失敗したりデータを失ったりするリスクを減らすため、次の点を押さえておきます。
設定のバックアップ
どのクライアントでも、少なくとも次を保存しておきましょう。
- 使用中のプロファイルYAML(多くの場合、アプリデータ内の
profiles/など) - 購読URL(複数ある場合はメモやスクリーンショット)
- カスタムルールや上書き(Clash for WindowsのMixin/Overrideなど)
現在のコアバージョンを確認
設定またはバージョン情報を開きます。バージョン表記に meta や mihomo が含まれていれば、すでにMeta利用で、更新だけで足りることが多いです。単に clash とバージョン(例:clash v1.18.x)だけの場合は、フル差し替えを想定します。
最新のMeta(mihomo)を入手
古いClash for Windowsを手で直すなど、自分でコアを取りに行く場合は、mihomo GitHub ReleasesからCPUに合ったアーカイブを選びます。
- Windows 64ビット:
mihomo-windows-amd64.zip - Windows ARM:
mihomo-windows-arm64.zip - macOS Intel:
mihomo-darwin-amd64.gz - macOS Apple Silicon(M1/M2/M3):
mihomo-darwin-arm64.gz
Alphaビルドの両方があります。普段使いでは、名前にalphaのない最新の安定リリースを選ぶのが無難です。
Windows:Clash for Windowsでコアを差し替える
Clash for Windows(CFW)はエンジンを単体のファイルとして保持するため、手動の入れ替えが比較的わかりやすいクライアントです。
バイナリの場所
既定では、インストール先の resources\static\files\win\x64\、32ビットなら win\ia32\ などにあり、ファイル名は多くの場合 clash-win64.exe(環境に合わせた名前)です。
CFW内のSettings → General → Home Directoryからデータフォルダを開き、そこから clash-win64.exe を探す方法もあります。
手順
- Clash for Windowsを完全に終了します(トレイアイコンからも終了し、古いプロセスが残らないようにします)。
mihomo-windows-amd64.zipを解凍し、新しい.exeを取り出します。- 元のバイナリ名に合わせてリネームします(例:
clash-win64.exe)。 - 元ファイルを
clash-win64.exe.bakなどにリネームして退避し、新しいファイルを同じフォルダに置きます。 - CFWを再起動し、Settings → General → Core Version にMeta/mihomoの表記があるか確認します。
Windows:Clash Verge RevならMetaが最初から
Clash Verge RevはClash Vergeのコミュニティ系フォークで、Meta(mihomo)コアが同梱され、モダンなUIを備え、Windows向けGUIの中でもメンテが活発な部類です。これから入れるなら、多くの場合CFWよりこちらが現実的です。
新規インストール
Windows向けダウンロードページから最新の .msi を取得します。インストール後は同梱のMetaコアでそのまま使え、手動コピーは不要です。
CFWから購読を移す
- CFWでProfilesを開き、プロファイルを右クリックして購読URLをコピーします。
- Clash Verge Revで購読/Subscriptionsを開き、インポートにURLを貼り付けます。
- 取得が終わったらプロファイルを選び、有効化します。
- 設定 → コア(表記は版により異なります)で、有効なコアがMeta(mihomo)か確認します。
同梱コアの更新
Verge Revでも、同梱のmihomoが常に最新とは限りません。設定のコア欄で更新を確認を使い、アプリに新しいバイナリの取得と適用を任せると、CFWの手作業よりずっと楽です。
macOS:ClashXのコアを差し替える
ClashXは長く使われてきたmacOS向けGUIです。エンジンは拡張子なしの clash という名前でアプリバンドル内にあり、パッケージの内容を表示から置き換えます。
バンドルを開く
FinderでClashXを右クリックし、パッケージの内容を表示 → Contents/MacOS と進み、clash を探します。
手順
- ClashXを完全に終了します(メニューバーアイコンから終了)。
mihomo-darwin-amd64.gz(Intel)またはmihomo-darwin-arm64.gz(Apple Silicon)を解凍します。- ターミナルで実行権限を付与します:
chmod +x mihomo-darwin-amd64(実際のファイル名に合わせてください)。 - 元の
clashをclash.bakに退避し、新しいバイナリをclashにリネームしてMacOSに置きます。 - 署名済みアプリを書き換えたため、起動がブロックされることがあります。システム設定 → プライバシーとセキュリティで許可するか、
xattr -dr com.apple.quarantine /Applications/ClashX.appで隔離フラグを外します。 - ClashXを再起動し、ヘルプ → ClashXについてなどでコア表記を確認します。
arm64 ビルドを使ってください。誤って amd64 を入れるとコアが動かず、プロキシ全体が不通になります。
macOS:Clash Verge Revも同梱Metaで便利
macOS版のClash Verge Revもあります。Windows同様、比較的新しいMeta(mihomo)が埋め込まれ、GUIから更新でき、Apple Silicon/Intelの両方で手軽な選択肢のひとつです。
macOS向けダウンロードから最新の .dmg を入れ、アプリケーションフォルダにドラッグすれば、バンドル内の手術は不要です。
他のクライアントやリンク一覧は、ダウンロードセンターもあわせて参照してください。
Hysteria2とTUIC v5を有効にする
コアを入れ替えたあとは、Metaが追加するプロトコルがYAMLで使えるようになります。Hysteria2とTUIC v5は、パケット損失の多い不安定な回線でも使われやすい低遅延系の選択肢です。
例:Hysteria2プロキシ
Hysteria2はQUICベースで、損失が大きい環境でも伸びやすいことがあります。プロキシ定義の例です。
proxies: - name: "HY2 サンプル" type: hysteria2 server: your-server.example.com port: 443 password: "your-password" sni: your-server.example.com skip-cert-verify: false fast-open: true
例:TUIC v5プロキシ
TUIC v5もQUICを使い、旧世代のTUICに比べてハンドシェイクや多重化まわりが改善されています。例:
proxies: - name: "TUIC v5 サンプル" type: tuic server: your-server.example.com port: 443 uuid: "your-uuid" password: "your-password" alpn: [h3] version: 5 skip-cert-verify: false congestion-controller: bbr
プロキシグループに載せる
追加した名前を proxy-groups(URLテストの「自動選択」など)に書かないと、一覧には出てもルールから選ばれません。例:
proxy-groups: - name: "自動選択" type: url-test proxies: - "HY2 サンプル" - "TUIC v5 サンプル" # ... 他のプロキシ ... url: "https://www.gstatic.com/generate_204" interval: 300
動作確認とよくあるエラー
新しいコアを本番利用する前に、簡単な確認をしておくと安心です。
コア表記の確認
設定またはバージョン情報で、meta または mihomo とセマンティックバージョン(例:v1.18.x)が出ているか見ます。まだ古いPremiumのように見える場合は、パスやファイル名がずれています。
プロファイルの再読み込み
再読み込み後、ログ/コアログをざっと見ます。YAMLの不正なフィールドについては、Metaは行番号つきで分かりやすく出してくれることが多いです。
よくある症状
| 表示/症状 | 想定原因 | 対処 |
|---|---|---|
unknown field: xxx |
古い/非対応のYAMLキー | 該当キーを削除するか、Metaのドキュメントに合わせて改名 |
bind: address already in use |
ポートの競合 | YAMLのポートを変えるか、占有しているプロセスを止める |
| コアがすぐ終了する | CPUアーキテクチャの不一致(amd64/arm64) | 環境に合ったビルドをダウンロードし直す |
| macOSで開発元を確認できない | 改変したバンドルや隔離フラグ | 設定で許可するか、アプリに対して xattr -dr を実行 |
| Hysteria2がつながらない | サーバーとクライアントのプロトコル不一致 | リモートがHysteria2(旧Hy1ではない)かプロバイダーに確認 |
遅延テスト
クライアントのプロキシ一覧で遅延テストを実行します。以前はタイムアウトだったHY2ノードが、Meta入り後は数値が返るようになることが多く、同じノードでもQUICまわりの安定感は旧コアより上がりやすいです。
まとめ
コアを上げることは、車のエンジンを新しいものに差し替えるのに近いです。Premiumの能力の限界が、「回線が悪い」「ノードが悪い」に見えていた問題の正体だった、というケースはよくあります。一方で、GUIごとに操作のしやすさはかなり違い、すべてをYAML直編集に頼るクライアントや、設定が深くに埋もれてトラブル時に困るクライアントもあります。
こちらで紹介しているClashクライアントは、購読の取り込みやノード選択、ルール管理をUI中心にまとめ、Metaを同梱し手動のバイナリ差し替えなしで更新できる設計を重視しています。今の環境が手間に感じるなら、一度試す価値はあります。
ポリシーグループ、Rule Providers、DNS漏洩対策など、YAMLをさらに掘り下げたい場合は、技術コラムのほかの記事も参照してください。